「顧客起点マーケティング」を読んだ 基礎編

マーケティングはブランド・エクイティを貯めるためのものだと思っている。今回はニュースピックスなどのマーケティングを担当した西口一希さんの著書顧客起点マーケティングを読んだ。

序章: 顧客起点マーケティングの全体像

「顧客起点マーケティング」は、一人の顧客を起点に商品やサービスの新たな可能性を見つける概念。(N1分析)この一人の選び方は、顧客ピラミッド(5セグマップ、もしくは9セグマップ)から特定の顧客セグメントの一人を抽出して、N1分析を行い、勾配黄道を左右する言語化されていない深層心理のニーズをつかんで「アイデア」を開発して、定量的な検証も行い打ち手を検討します。

一連の流れは以下の通り。

  1. 顧客ピラミッド作成: 簡単な調査で顧客を5つのセグメントに分ける
  2. セグメント分析: 行動データと心理データから各セグメントの基本的な顧客特性を分析
  3. N1分析: セグメントごとの「一人の顧客」にインタビューして、認知や勾配のきっかけと深層心理を分析
  4. アイデア創出: N1分析を元に、その顧客の行動と心理状態を変える「アイデア」を考案
  5. アイデア検証: 「アイデア」をコンセプトに変換し、定量的調査でポテンシャルを評価して実践し、顧客ピラミッドの動きを確認

この手法を使って肌ラボを年間売上20億円から160億円に押し上げた。

マーケティングの「アイデア」とN1の意味

アイデア

アイデアは独自性便益の二軸、四象限で理解することができる。特に独自性が重要で、見たことのない、聞いたことのない、触ったことない、嗅いだことのない、経験したことのないという五感で感知したことがない個性。独自性と便益の両方が揃っているものをアイデアと呼ぶ。

プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデア

マーケティング業務上、アイデアには2つある。

  • 商品やサービスそのものとなる「プロダクトアイデア」
  • 少お品やサービスを対象顧客に認知してもらうための手段である「コミュニケーションアイデア」

コミュニケーションアイデアだけで中長期の売上を獲得することは不可能。プロダクトアイデアにおいてRTB(Reason to believe:信じるにたる理由)というものがあり、◯◯が入っているから風邪に利くなどの理由のことをいう。独自性のあるプロダクトアイデアはすぐに真似され、コモディティ化するため、競争に勝つためにはコミュニケーションアイデアが必要になる。広告の独自性はすぐに理解できるが、便益は「面白さ」や「楽しさ」などのことを指す。ただ、面白くて楽しくても購買につながるかは別問題でここをうまく機能させなくてはいけない。

プロダクトの独自性と便益が強い場合は特に工夫する必要なくコミュニケーションアイデアをつくればいいが、独自性がなく便益がある場合はコミュニケーションアイデアの独自性を増幅し、便益の魅力を高めてコモディティ化を回避する必要がある。(プロダクトアイデアの理解と共感、その体験がブランドをつくる)便益がない場合は一過性の売上にしかならない。

早期の認知形成の重要性

トップブランドの多くは、そのプロダクトアイデアに関して後発商品。認知を十分に作れていないから売れていないのに、見た目の売上上昇が止まったからといって透視を止めてしまうケースが多い。

プロダクトアイデアコミュニケーションアイデアターゲット顧客での早期の認知形成が成功の3要素。

プロダクトの最大ポテンシャルは実現されていない

世の中の商品やサービスのほとんどが、そのターゲット顧客全体で50%の認知も獲得できていない。

自社商品を模倣した競合商品が登場すると、それを単なる模倣で「新しくない」から脅威ではない、と軽視しがち。しかし、未認知顧客層にとっては、その競合商品は「新商品」として受け入れられる。

  • そもそも知らない: 未認知
    • マーケティング投資対象のターゲット顧客層と訴求内容の見直し
    • メディア戦略(選択や投資量)の見直し
  • 知っているが買う理由や動機がない(認知かつ未購買)
    • ターゲット顧客層と訴求内容の見直し
    • 便益に対して価格が適切かどうか見直し
    • そもそものプロダクトアイデアの改良
  • 知っていて買いたいが販路がない/わからない(認知かつ未購買)
    • 販路自体の拡大強化、もしくは、どこで買えるのかという販路自体の認知形成の強化

N1に絞り込むことを恐れない

何らかのコミュニケーションや体験を通じて、そのブランド独自の魅力的な便益を認識して初めて購入した、つまり顧客化したときの重要なきっかけ、さらにロイヤル化した重要なきっかけが何だったのかをN1分析で見つける。

顧客ピラミッドで基本的なマーケティング戦略を構築する

顧客ピラミッドの作成と意味

最もシンプル且つ汎用性が高いのが、顧客ピラミッド。商品やサービスの顧客層全体を5つのセグメント分類する方法です。

  • ロイヤル顧客: 認知あり、購買頻度高
  • 一般顧客: 認知あり、購買頻度中〜低
  • 離反顧客: 認知あり、購買経験あり現在購買なし
  • 認知・未購買顧客: 認知あり、購買経験なし
  • 未認知顧客: 認知なし

「知っているか?」「買ったことがあるか?」「購入頻度はどれぐらいか?」で分類できるのでネット調査も可能。

行動データと心理データの分析

EC事業などでは行動データを読み取れるがそれを元にしたABテストだけしていても再現性のない解法になる。大切なのは心理データの分析。

量的調査の代表的な心理データは以下の通り。

  • ブランドの認知
  • ブランド選考度
  • 属性イメージ
  • メディア接触
  • 空谷の認知経路

量的調査による心理把握には限界があるので、より深い部分を知るためにはN1分析が必要になる。ペルソナはあんまり意味ない。

「アイデア」創出と再現性の確認

重要なのはどんな「アイデア」=独自性と便益と感じとったか。N1インタビューで思わず驚く、笑ってしまう、信じがたいと思えるような事実がその手がかり。

5W1Hのマーケティング戦略立案

量的調査が終わればコンセプトテストをする。コンセプトとは、「独自性と便益」+「価格と商品・サービス情報」を指します。これを顧客ピラミッドの各セグメントに購買意向と独自性を感じるかのスクリーニングをする。

ロイヤル顧客のスーパーロイヤル化

ロイヤル顧客でも他のブランドと併用している場合がある。購買頻度の向上、一回あたりの購買点数や購買額の向上促進プランが必要。貨幣バリュー提案は中長期的にはプロダクトアイデアを毀損する。

一般顧客のロイヤル化

競合商品を使っていることが多いため、こちらのブランドを使った方が良い便益と理由を訴求し、体感してもらう必要がある。プロダクトアイデアの独自性の理解や共感が薄い場合は、その訴求や体験を強化する。独自性を認識されながらも便益が弱ければ、その便益の優位性を理解し体感できる仕組みと訴求プランを組み込みたい。(訴求: 買い手の購買意欲に働きかけること。)

離反顧客の復帰

プロダクトアイデアが評価されず、競合に移動している場合が多い。中長期でプロダクトの強化や新商品開発を検討したい。

認知・未購買顧客の顧客化

プロダクトアイデアの魅力を理解していないか、便益を感じながらも独自性を感じていないか、購買意思があっても購買機会が不足している問題。この層は、保守的なため独自性が先進的であればあるほど慎重になる。そこで、世の中にどれだけ広く受け入れられ信頼されているかを示すため、売上実績や、セレブリティやロイヤル顧客からの推奨を「コミュニケーションアイデア」に組み込んで訴求する。

未認知顧客の顧客化

獲得コストが悪くなりがちだが、中長期の成長のために時間をかけて認知形成、顧客化、ロイヤル化に継続的に取り組む。すでに認知獲得できた上位の4層と何が違うのかを見極めたい。多くの場合、新しいことに保守的で、メディア接触も限定的、デジタルメディアとの接触が低く、ライフスタイルがオフライン中心で、テレビや新聞などのマス媒体や、日常的に訪れる特定の店頭やコミュニティでしか情報を取得しない。

マーケティング投資の実行

「アイデア」の有効性を事前に証明する必要がある

N1分析を元に作った複数のアイデア(独自性+便益)をコンセプトとしてテストしていく。コンセプト=プロダクトアイデア(もしくはコミュニケーションアイデア)+価格と商品情報を明確化し、購買意欲、独自性などを5段階評価する。ピラミッドごとにテストすることで施策がどのような影響を与えるか理解することができる。

「アイデア」の有効性をテストマーケットする必要がある

テストマーケットをする場合、対象マーケット内での顧客ピラミッドの行動・心理データの変化を、テスト前後で評価できるように設計して、効果検証を活用する。

「アイデア」を全国展開できる状態にある

実際のマーケットでのPDCAを通じて戦略やプランの精度を上げていくこと。顧客ピラミッドのセグメントごとに行った行動・心理データ分析、N1分析を通じた「アイデア」策定ができていれば、新しい戦略でのコミュニケーションや施策からは、必ず成果が出る。

競合分析と「オーバーラップ分析」

同じ顧客ピラミッドを使って、競合も調査対象に入れる。競合との顧客の重なりを可視化して分析をすることをオーバーラップ分析という。P104の表はわかりやすい。

新規カテゴリー参入への活用

既に存在しているブランド同士でオーバーラップ分析を行ってから新規参入することで同質化に陥らない独自性のある新規参入の可能性を見出せる。

BtoB事業での活用

ネット調査は行いえないが、考え方は同じ。

トラッキングの重要性

顧客の層の移動、層別の売上トラッキングの仕組みを作っておけば、すぐに施策、対策を打つことができる。

顧客ピラミッドとイノベーター理論の関係

新しい商品・サービスの市場浸透していくか、対象顧客を情報感度別に5つの層(イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガード)が有名。一過性で終わらないかどうかは、イノベーターとアーリーアダプターの合計の16%が使っているかが分岐点となる。
キャズムでは、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの16%を超えることは難しいとされている。

ブランド認知から購買までの転換率(コンバージョン)を仮に高めの30%とすれば、対象マーケットの顧客数全体で16%の普及率を超えるには、ブランド認知度は 16% / 30% = 53%が必要となる。

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